「そろそろ、お出まし」

 

 巣ごもり生活もそろそろ終わりが見えてきたようだ。かく言う小生も狭いベランダで広い空を見上げながらその日を待ちわびていた一人である。部屋におり、騒ぎの中で季節が動いていることに気づかないでいる人も多いようだが、そろそろ、奴のお出ましである。そう、「蚊」だ。

 世界全体でコロナ禍による死者の数は、5月27日現在では約35万人。しかし、年間でその倍以上の死者を出しているのが「蚊」である。この小さな虫を媒介として、感染症などでこれだけの人が亡くなっている。マラリアやデング熱という言葉は決して遠い熱帯の国々のことではなく、気候が急激に変化しているわが国でも、大きな問題となってきている。

 その蚊で思い出すのは、最近は日本ではほとんど見かけないが、東南アジアの諸国に行くと、いまだに現役である「蚊帳」。以前マレーシアの山奥を訪問し、泊まった部屋にテントのような蚊帳を張った。風情を感じると言いたいところだが、慣れていないせいか、どうやら奴が一匹中に紛れこんだようだ。あの小さな奴にその晩大いに苦しめられ閉口した。小さく取るに足りないものを非力と見下す者に対して言われる言葉がまさにこれ、「蚊帳の中の一匹」。あの小さな「奴」が、どれほど影響を及ぼすことか。漢字では、虫偏(むしへん)に文(ぶん)とは、見事な組み合わせ。今にもあの悩ましい音が聞こえてきそうな。

 まだまだ密を避けよとのこと。ではといって窓を開けると、奴は音もなく忍びこんでくる。そして、耳元でそのお出ましを知らせてくるのだ。一難去ってまた一難。ああ、何とも悩ましい。

 

『蚤と蚊に 一夜やせたる 思ひ哉』 子規

 

2020年5月27日

Cross Place
クロスプレイス
 

〒579-8046 大阪府東大阪市昭和町22‐12

HSKビル4F

TEL&FAX 072-983-6868

Email :  crossplace0416@gmail.com

Website :  https://www.crossplace0416.com

 

  • Instagram Social Icon
  • Facebook Social Icon
  • YouTube Social  Icon
BN-paypal-logo320_145.png

Write Us

© Cross Place   2017